約 2,307,433 件
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/535.html
戦うことを忘れた武装神姫 その22 ・・・その21の続き・・・ 「なぁ・・・お前らは、本当におっきくなっちゃっていいのか?」 「?」 久遠の問いかけに、怪訝な表情の久遠の神姫たち。 「ちっちゃいからこそ、出来ることがあると思うんだけど。なぁ、CTa。」 そのとき久遠に振られて、はっと気が付いた。 -なんで、あたしはちっちゃいもの研に入ったんだろう-。 「そう言われてみれば。」 シンメイが腕組みをして考える。 「うにゃー、にゃーは、やっぱりちっちゃいまんまでいいよー。」 と、ぐい飲みの日本酒を飲み干したエルガが言った。 「にゃーは、ちっちゃいからマスターとラヴーなの。 おっきくなったら、 マスターといっしょに出かけられない。 そうすると、マスターのお仕事の お手伝いができなくなっちゃうのダ。」 そういやエルガは最近、久遠の仕事でプレゼンのサポートするようになった とか言ってたっけ。。。 シンメイも続けた。 「大きな身体を頂けば、掃除やお料理で、マスターのお手伝いをすることが 出来るようになると思います。 ですが、そうすることであたしも多くの物 を失うことになりますし、マスターも失う物があるはずです。 たとえば、 あたしたちを『かわいがって下さる』事、とか。。。」 「そうなの。 おっきくなれば、もっといろんなことが出来るの。おっきく なって、お手伝いもしたいよ? でもね・・・シンメイの言うとおりなの。 にゃーは、やっぱりちっちゃいにゃーが好き。その方が、マスターはきっと かわいがってくれるの。」 「ですねぇ。。。 ちっちゃいあたしたちに一目惚れして、選んで頂いたん ですから。 ねぇ、マスター。」 「・・・その通り。」 久遠は2人の頭を撫でている。 「でもでも。」 エルガがさらに続けた。 「にゃーたちは、ちっちゃいままでイイっていったけど、きっとおっきな体 をほしがる娘もいると思うの。 本当に、マスターを助けたいって思ってる ひとも、いると思うよ? ねぇ、シンメイ。」 「私も同じ事を考えていましたよ。 それぞれの人間に、それぞれの進む道 があるよう、私たち神姫にも歩むべき人生・・・でいいんでしょうか、それ ぞれにあると思うんです。『神姫』として答えをひとつにすることは・・・」 「できません」 「できないにゃ」 2人は同時にあたしに向かっていった。 「ということだ。 なぁ、CTa・・・いや、木野羽よぉ。 思い出してみろ。 お前がちっちゃいもの研に入った理由を。」 -小さい存在だから、伝えられるものがある、だろ?- エルガとシンメイの小さな頭を撫でながら、久遠がぼそり呟いた。 -そうだ。 なんで、忘れていたんだろう。 こんなに大切な想いを。 -目前で久遠と飲んだくれているのは- -人と機械との垣根を低くした、小さくも画期的な存在- 「ん? どうした? そろそろ寝ゲロの時間か?」 「ばかたれ。 考えごとしていたんだよ。 ったく・・・いっつも寝ゲロを するわけじゃないっつーの。」 久遠の突っ込みに、テーブル下で軽くケリを入れながら答えた。 「痛ぇなぁ。。。 何も蹴ること無いだろ。」 「・・・久遠、ありがとな。」 「へ?」 「・・・何でもない。あーあ、なんか今日は酔えないなぁ。久遠、帰るぞ。」 「はいよ。割り勘でいいかな?」 と、久遠がエルガを持ち上げると、 「えー? にゃーはもっと飲む〜。」 名残惜しそうに徳利をつまみ上げようとするエルガ。 「エルガ、そろそろおひらきにしましょう。マスターもCTa姉様も、明日は 仕事なんですから。」 「ちぇー。」 久遠の頭にのぼったシンメイにたしなめられ、しぶしぶ久遠の胸ポケットへ 収まるエルガ。 その光景に・・・あたしの心は決まった。 「はは、いいモン見せてもらったし、いい話も聞けたし・・・今日はあたし がおごるよ。」 翌朝、まだ街が目を覚ます前。あたしは自慢の愛車(バイクだぞ)を飛ばし、 鳳条院グループのとある施設へ来ていた。フェレンツェ・カークランド博士 からもらった名刺の裏に手書きで記載されていた場所。。。 その門前にいる守衛に声をかける。始めは怪訝そうな顔をしていたが、博士 の直筆メモの入った名刺を見せると話は早かった。 あたしは、守衛に頼み、 ちっちゃいもの研の名刺と一通の手紙を渡してもらうようお願いした。 守衛は快く引き受けてくれた。あたしは丁寧に礼を言うと、おそらく二度と 来ることがないであろうこの施設に背を向けた。 ・ ・ ・ ・ ・ -親愛なるフェレンツェ・カークランド博士へ 先日は直々のお誘い、大変光栄に存じます。 ですが、誠に申し訳ありません。今回の件につきまして、残念なご返答を せざるを得ない結論に達しました。 博士の研究には、私も多大な関心を寄せております。 私が研究しており ます理論・技術の多くは、博士の取り組んでおりますHVIFに於いて、現段 階でもその多くが(HVIFのように、大型筐体であるならば)実現が可能と 思われます。 しかしながら私は、「小さきもの」での可能性を探ることが、私にとって 生涯の研究課題と思っております。 つきましては、HVIF計画への参加は、見送らせていただきたいと存じます。 ご期待に添えぬ回答となりました事、深くお詫び申し上げると共に、貴方 の研究がより一層の発展を遂げますよう、心よりお祈り申し上げます。 東杜田技研・小型機械技術研究製作部(ちっちゃいもの研) 主任研究員・工学博士 木野羽 さんご(Dr.CTa) 追伸:技術その他、相談にはいつでも応じます。その際、肩書きは無しで、 あくまで新規好きの一人として会っていただけると大変に嬉しく存じます。 ・ ・ ・ ・ ・ もう迷わない。 あたしの「道」はちっちゃい機械を極めること。 ちっちゃい機械が秘める「可能性」を追い続けたい。 だからこそ、この研究所に入ったんだ。。。 まだクルマも少ない国道を、アクセルを全開ですっとばす。 さー、早く出勤しないと。 溜まった仕事片付けないと、まーたヴェルナに ブチブチ言われちゃうからな。 おっと、ついでにロボビタンを買っていく かな。沙羅もお疲れの様子だし。。。 これでいいんだ。 あたしは、ちっちゃいもの研の主任、Dr.CTaなんだっ!! それに・・・。 神姫にあいつを取られたなんてなろうものなら、人間として失格だもんね。 <その21 へ戻る< >その23へ進む> <<トップ へ戻る<<
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/969.html
武装神姫のリン 鳳凰杯篇 その3 「ふう、何とかなったな。」 鶴畑大紀は表情には何も表さないが、小さく安堵の声をだす。 ミカエルの勝手でセカンドランカー相手に黒星をこんな形でつけることになれば、自分は周囲の笑いものになると分かっていたからだ。 昨夜の出来事でミカエルのコアを変えることは確定していたが、それでもこの大会は兄に自分の力を示すための絶好の舞台なのだ。 ここで棄権という形をとることは出来ない。 だからこそ、何らかの要因でミカエルが戦う気をなくした場合の緊急用のプログラムとして"現在のミカエル"自身から体のコントロールを乗っ取り、戦闘行動を行う独立AIを仕込んでおいた。 これがこんな形で作用することになるとは思わなかったが、AIを仕込んだ彼の選択は正しかったのだ。 今このとき、"ミカエル"は生意気なことにも言葉巧みにミカエルをサレンダー一歩手前まで貶めた悪魔型に砲撃を加えている。 荷電粒子砲を撃ち、その反動を殺しつつも正確にレールガンを撃ち込む。 何とか紙一重で避けられているようだが、その尋常ならざる威力は確実に相手にダメージを与えていることだろう。 砂煙の向こうに、悪魔型の姿が消える。 砂煙の向こうに消えていくミカエルを見てもその表情は変わらない。 完全に"乗っ取られた"ままなのだ。 そう燐は確信している、たぶんこの戦闘を終らせなければ彼女と話すことも不可能だろう。 彼女を消させない。そのためにそして自分のために、勝つ。 「いくら威力があろうとも…直撃しなければ!!」 砂煙が晴れるのを待っていてはやられる、とはいえ迂闊に飛び込むのも危険。 そのため、燐は一度距離を置く。 出来るだけ音を立てずに足を思い切り曲げ、一気に蹴りだす。そうして砂煙から脱出す… 「チリとなれ」 そこを荷電粒子砲が襲う。 「それぐらい…!」 燐は滞空中に無理やり武装腕部の右手の爪を地面に突き立て、それを軸としてコンパスのように回転して進行方向を変更。 そのまま"ミカエル"へと跳ぶ。 「倒します、貴女を!!」 左手の鎌を振りかぶり、また大きくなった右腕の爪を光らせてミカエルへと突進する。 一撃目、爪による攻撃はビットのシールドに防がれるが衝撃はビットを吹き飛ばす。 そこから刹那遅く繰り出される本命の一撃。 鎌による一閃をミカエルは荷電粒子砲で受ける。 それで粒子砲は使い物にならなくなった…しかし。 「…切り裂け。ゼロ」 突然切断された粒子砲の中から飛び出した何かによって燐本体の右腕に傷が出来る。 「なっ…」 それに気をとられた隙にレールガンが撃ち込まれ、直撃は免れたものの燐は後退せざるを得なかった。 思わずひざをつく燐。 右腕の傷は浅いものの、痛みによって集中力が鈍る。 こんなことではダメだと分かっていても痛みは予想以上だ。粒子砲から出てきた"ゼロ"の刃は毒付きだったのかもしれない。 とにかく、体制を立て直す。 右腕をかばいつつも立ち上がる。 細かな傷はあるものの、武装が使用不可能になるようなダメージは無い。まだ戦える。 左手にはフルストゥシリーズによる連結刃。右腕はそれに添える。 3段攻撃。 あの技ならば、たとえ後ろから攻撃されて背部武装が砕けようがその次が己自身を撃つ前に届く。 防御は考えないで、攻撃あるのみ。 「燐、あせるな。絶対できるぞ!!」 マスターの声が聞こえる。そう言われてコレを試さないわけには行かなかった。 「行きます、風琴!」 燐はまたもミカエルへと突っ込む。ビットは先ほどと同じく防御体制だ。攻撃は通らない。 はずがビットが次々と爆発していく。 ふと見れば燐の傷ついた右手にはリボルバーが握られ、ビットが防御フィールドを張るために突き出す1点のユニットを次々撃ち抜いていく。 ミカエルもこの事態に身を翻し距離ををろうとする。が足が引っ張られる。 見れば連結刃が脚に絡まり、そこから伸びたワイヤーが燐の武装腕部につながっている。 「ち…」 ミカエルは腰から引き抜いたレーザーブレードでワイヤーを切断する。 が切断される寸前で燐がワイヤーを引き。ミカエルの体勢がを崩す。 「ゼロ!!」 また見えない何かが襲ってきてその刃はまた己の体を切るだろう。 それでも燐は止まらない、ミカエル交わした約束。 それを守るために突き進む。 「…!」 ミカエルの目前、1瞬だが鏡に光が反射したかのようなきらめきが燐には見えた。 そこにゼロがいる。そう燐は信じて右手を振り上げてトリガーを引く。 "カシャン"というあっけない音を立ててゼロが砕ける。 ゼロの正体は通常は不可視の円盤型のビット。ほぼ完璧なステルス性を持った円盤のふちが刃になった兵器。 ただ特性上、通常反射する光を98%カットしたとはいえ、まれな条件が重なった場合。神姫であればその反射光を探知可能かもしれない。 そう技術者が言っていたのを鶴畑大紀は思い出した。 そんなゼロを打ち破る唯一の手がかり。 それが燐に見えたのは持ち前の集中力の賜物だったのか、それとも運命のいたずらなのかは分からない。 それでもゼロがあっけなく落とされたのは鶴畑大紀にとって衝撃だった。 「なっ…」 ミカエルもそれは予想だにしていなかったらしい、戦闘用AIとはいえ多少の感情の幅は残っていたのか。うつろだった目が見開かれた。 「させん!!!」 いままで気がつかなかったが、腰にもう1本装備されたレーザーブレード。 それを両手に取るミカエル。 砲撃戦が得意な天使型であるにもかかわらず。あくまで立ち向かって来るらしい。 燐は気を引き閉めつつ、一度深呼吸。 それと同時にブースターを思いっきり吹かせてミカエルに迫る。もう左手に握られた鎌をぶつけるのみ。 それはミカエルも同じだった。ゼロを失った今レールガンを撃つ距離も余裕も無い。レーザーブレードで迎え撃つしかなかった。 「これで!!」 「させん!」 2つの影が交差する。 一方は銀の翼を持つ悪魔。もう一方は白き翼を掲げた天使。 どちらもがほぼ同時に墜落した。 "両者同時に墜落だ~激しく砂煙が上がる~立ち上がるのはどっちなのか…もしくはどちらも立ち上がるのか…" 実況も息を呑んでいる。 そして会場を静けさが包む。 「…まだ、折れません。」 「まだだ…」 スピーカーに燐、ミカエルの声が響く。 いっせいに歓声が湧くがまだ砂煙は晴れない。 ようやく晴れた砂煙の向こうには、右足のランディングギアをすねから下を失いつつも両手の剣は離さないミカエル。 そして武装腕部を両方とも二の腕から失って武器を失った燐。 "立ち上がった両者だが燐選手は武器が無い!!これで勝負は決まってしまうのか~" しかし燐は正面向いたまま、ふと俺のほうを見て微笑んだ。 これで俺が言いたいことが燐には伝わっているということが分かって安心する。 「武器が無いのにどうするつもりだ?」 少し余裕を見せたのか…ミカエルが聞いてくる。 「いえ、まだ私には剣が残されています。」 ガシャンという音を立てて背部ユニットが落下。 そして燐の姿は素体に基本のアーマー類のみといいう出で立ち…だた右手に光る宝石が一つ。 「バルディッシュ…ある少女を守るために使い魔によって作られた杖であり武器。たとえ天使であっても切り裂きます。」 サイドボードの容量ぎりぎりに詰め込んだバルディッシュこれで決着が付くだろう。勝つにしろ負けるにしろ。 「いくよ、バルディッシュ…」 "yes sir" 宝石が光り、魔法の杖…バルディッシュ・アサルトに変わる。それと同時に燐の背中に大きなマントが現れた。 バリアジャケットのフル装備はサイドボードに入りきらなかったため、機動能力が上がるマントを優先した結果だ。 「ふん…その程度で」 「そちらも満身創痍にみえますが?」 突然ミカエルの背後にビットが浮かぶ。全機撃ち抜いたと思っていたが生き残ったものがあったらしい。 そして最後の舞が始まる。 「……ふん、動くか…終わりにさせてもらう。」 「まだ動きますか…やっかいですね」 ミカエルが構えるのは翼につながったレールガン。弾切れもしくは壊れたと思っていたが、まだ使えるらしい。 今の燐の防御力は薄い。あのレールガンを受ければ負けだろう。 マントによって機動力こそ戦装束のときより上がっているが、その代わりとして防御力がゼロに近い状態。 レールガンの弾速からしてこの数を全弾避けるということはかなわない。 横や後ろがダメなら…飛び込むしかない。 「行きます!!」 燐は全速力で飛ぶ。 「砕けろ!!」 連射されるレールガンを避け、時にはバルディッシュでたたき落とす。 しかしそれでも少しづつ身体に傷が増え、それにつれて反応が遅れ、またしても傷を負う。それでも燐は止まらない。 「堕ちろ、堕ちろ!!」 敵ももうがむしゃらに、しかしねらいは正確に撃ち込んでくる。 マントもだんだんとその形を保てないほどぼろぼろになっている。あと…数メートル。 たったそれだけの距離だ。たどり着いてみせる。 「ええい、堕ちろといっている!!」 ビットが背後から砲撃を加えてマントの推進、滞空能力を奪おうとする。 ハーケンフォームとなったバルディッシュ・アサルトを背後に振り抜き残り3機の内2機を撃墜、残り1機は…矢のようなプラズマエネルギーの塊を発射する「プラズマランサー」で仕留める。 そして一瞬だけ肉眼では捉えられなくなるような速度へと加速する技であるブリッツラッシュを使うことにより"紙一重"でレールガンを回避。 これで使える技は無くなった。後はこのハーケンフォームの刃のみがたよりだ。 一方のミカエルも先ほどの砲撃でついにレールガンが弾切れを起こし、頼れるのは腰に備えたレーザーブレードのみになった。 「くっ、死ねぇ!!」 「私は…負けない!!」 お互いが、最後の力を振り絞って、跳ぶ。 ミカエルがレーザーブレードを振り上げ、燐がバルディッシュを横に振りかぶる。 激突。 レーザーブレードがハーケンの刃とつばぜり合いを演じる。 しかしコンディションの分だけミカエルの方が有利。しかし 「はぁ!!!」 「なっ…」 気迫は明らかに燐がミカエルのそれを上回った。 そして、 「もう、終わりにしましょう。」 「ほざくな!!」 ミカエルがレーザーブレードを力づくで振り切り、バルディッシュをはじき飛ばした。 「これで私の勝t…がぁ!」 勝利を確信していたであろうミカエルのほほに、衝撃。 燐はバルディッシュを支える腕の力を抜き、ミカエルがレーザーブレードに加える力のベクトル利用して体を回転。 そしてその遠心力を使った回し蹴りを叩き込んだのだ。 ミカエルの手から離れたレーザーブレードをキャッチし、燐はミカエルの胸の中心を穿つ。沈黙。 "勝者、燐。" スクリーンに静かにジャッジAIが下した勝敗が表示された。 ~鳳凰杯篇その4?~
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1815.html
戦うことを忘れた武装神姫 - type_S -08 楽屋 イオ「こんばんは。今回のお話ではリペイント版として登場いたしました、イオです。あ、塗色ですか?これ、絵の具なんです。」 リゼ「マスターに恋する神姫ってのはよくいるけれどねー。ここまで歪んだ愛を『求める』神姫はそうそういないだろうねぇ。」 イオ「さすがの私も、今回の役は・・・もう二度とやりたくないですよ(苦笑」 リゼ「あはは、そういうと思ったよ。さすがはイオだ。」 イオ「・・・。何か引っかかりますが・・・」 リゼ(汗) イオ「まぁ、いいでしょう・・・ささ、夜も更けてまいりました。それでは・・・」 リゼ「おやすみ~。」 <<トップ へ戻る<<
https://w.atwiki.jp/mangaaa/pages/1909.html
270 名前:鼠 ◆KYUSO21aFo [sage] 投稿日:2007/01/21(日) 02 34 25 ID 9Sr6eO3y _人_ . ‐ . . . ̄ ̄ .`丶、 _人_ `Y´ _人_ 「丁 .エ´= . . . . . . . . . . . . .、 \ `Y´ `Y´, -‐  ̄ ̄`丶、 |/, / , - . / . . . . . . . . . .`ヽ.ーァ.┬ 、 / _ -、\ - /_./ { / / ヽ、ヽヽ \/ ./ . / /´ `ヽ、\ヽ/ィ.V_{ ./ハ| .l . .| . . . .. } } } リ小ヽ、V / // /、 、.ヽヽトヽハハ |/ .ハ .l!__lトl| |.| . . . // /イイ..リ. ト..Yヽ _人_ ||| / / /,ムzV-‐ヽ. l_ヽヽV!-|| ////L_、`T| | .. /メォrチ-}/ .ヽ|. ト! `Y´ !|| ! l_ムL ヘト.「ト lヽV|l/}//{!fr心 ヽト/j/´z≦ム| .l .| . / _人_|l !| l| |ト{ _Lj_|ハヽトヽV} | 辷シ^ 仆イl}ノ |! .! V `Y´ ! | 从ハ!z,三、 /r示i`Yトトヽ\ A __丶_ `ー l |. ト. l _人_ } | | l|〈{ lf_jハ 辷ン ´| !トヾー ヽ_. ,┴ュ.ノ . イ ハl ヽ `Y´ //!j,小 ``ー′__ ィ _ _/} |l!リ`ー/ ./! 三ュ .|=<. / ヽ . / ノ从|トlト . _ _ ヽ..ノr ヽヽ〉ノ / /ミy__ ..ゞー} . .l、|. . ヽ. _人_ ´ ヽ ヽ{{ //7T¨´〉 /ヽ. / ..´ ̄_ . -‐ ヽ ..ヾ、r‐_l _人_ `Y´ 〉ー、 厂ヽ \r_ヘ `ー ¨トァ- \ .. ` ..| `Y´ . /--/ | \ ヽ. } / / j´! ` ー┘ | / /.ァ く ヽ..__ノ ./ / / / ヽ.__ イ . / ヽ .ヽ / .l′ .| .{ ヽ { \ヽ{ .. | / . .} アーンヴァル&ストラーフ (武装神姫)
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2196.html
闇の中。 静寂に包まれた心地好い暗闇の中。 深く深く、意識がその闇の中へと溶けてゆく。 何物にも代えがたい至福の時。 そんなささやかな幸せを、突然鳴り響いた甲高いメロディーが容赦なく奪い去った。 「うあー……」 再び闇の中に戻ろうとする抵抗も虚しく、俺の意識は一気に呼び起こされる。誰だ、俺の安眠を妨げる奴は。 やかましく鳴り響く携帯を手探りでたぐり寄せ、この諸悪の根源との通話を繋げる。 「もしも……」 『はーやーとー! いつまで寝てんのー!?』 寝惚けた頭に飛び込んでくる怒鳴り声に、思わず俺は電話を遠ざける。こちらの返事も待たずに、あいつはあからさまな不機嫌さをぶつけてきた。 「なんだよ、朝っぱらからうるっせえな」 横目に時計を見るとまだ午前10時。とてもじゃないが健全な高校生が休日に起きる時間ではない。 『なっ、あんたが神姫見たいから付き合えって言ったんでしょー!? それなのにうるさい? そーゆーこと言うの?』 まだ頭がハッキリしないと言うのに、一息にまくしたてられる。えーと、神姫……? あ、そうか。 西暦2036年。 第三次世界大戦も、宇宙人の侵略もなかったこの平和な時代において開発された、全長15センチの自律型AI搭載ロボット、MMS(Multi Movable System)。 その中でも、最も一般的なのが『彼女』達。 オーナーに従い、様々な装備に身を包み戦場へと赴く彼女達。 そんな彼女達を、人はこう呼んでいる。 『武装神姫』と。 『武装神姫ーPRINCESS BRAVEー』 「うわぁー……」 想像以上の光景に、俺は思わず声をあげた。 都内某所にそびえるこの巨大なビル、通称神姫センター。このビルは部品や関連書籍の販売、更にはサポートセンターにバトルスペースまで、全てが武装神姫を取り扱う施設となっている。 そして俺はその中の販売コーナー、神姫本体の売り場に来ているのだが。 「これ全部そうなの?」 フロア全体に渡って所せましと陳列された神姫。カブトムシ型やコウモリ型、騎士型にセイレーン型、更には戦車型にシスター型とかなりの種類が並んでいて、あまり知識のない俺にはなにがなにやらまったくわからなかった。 「うん、すごいでしょー? もう随分シリーズも続いてるし、タイプ別に色々出てるからね」 舞はどこか嬉しそうに――おっと、そういえば自己紹介がまだだったな。 俺は新藤隼人。健全な男子高校生だ。以前からバトルに興味があり、ちょうど身近に神姫オーナーがいた為、俺も同じ武装神姫のオーナーになる事にした。 そして、その身近なオーナーというのが彼女、比々野舞(ヒビノ マイ)。家が近所だった事もあり、小さい頃からの腐れ縁を現在進行形で続けている。 後ろに結い上げたセミロングの黒髪と、丸い大きな瞳。 起伏の乏しい体を黒いボーダーラインのロングTシャツと袖のないパステルブルーのパーカーで覆い、青いキュロットから伸びる細身の足元には水色のスニーカー。 好きな青い色を基調としたその服装は若干の幼さを感じるが、露出した肢体は健康的に締まっていて、活発そうな印象を受けるだろう。 悪くない。うん、決して悪くない。 「……イヤラシイ目で見ないでよ、えっち」 「イヤラシクないですー。ちょっと客観的に観察してやっただけだよー」 舞はわざとらしく体を隠すと、冷ややかな目で俺を睨む。長い付き合いだが、そんな恥じらいがあったとは知らなかった。 「ふーん、変なの。ま、別にいいけどさ。隼人なんかに見られたって」 その発言は誤解を招くぞ。見てもいいのか?いいんですか?それとも異性としての意識が無いという事だろうか。うん、まったく興味が沸かない。 とにかく、舞はずいぶん前から神姫を所有しているので、初心者の俺としては色々意見を聞けるのは助かる。 ついでにこいつの神姫、天使型アーンヴァルのヒカリも紹介しておこう。片側だけ編みこんだ髪を耳の後ろに垂らしているのがトレードマーク。生真面目で大人びたアーンヴァルタイプには珍しくちょっと子供っぽいが、元気で可愛らしい娘だ。 このヒカリが俺も神姫を買おうってきっかけを作ったんだが、その辺りはいずれまた。二人は姉妹のように仲がよく、今日もヒカリは舞の肩に座って足をブラブラさせている。 「んで、どれ買ったらいいんだ?」 「自分で選ばなきゃしょーがないでしょー?どんな性格がいいかーとか、どんな戦い方したいーとかないの?」 舞は立てた指を左右に振りながらいくつかの選択肢を示していく。しかし、その動きに釣られてふらふらと頭を揺らすヒカリが気になって、話の内容はほとんど聞こえてこなかった。 「だいたいこんな感じかな?どう?」 「え?ああ、格闘戦がいい」 話は聞いていなかったが、戦い方ならそれしかないだろう。男だったら拳で語ってこそ。戦うの俺じゃないし、神姫は女の子だけど。 「アーンヴァル!天使型アーンヴァルがいいと思うの!」 舞の肩で話を聞いていたヒカリが、未だにふらふらしながら棚の白い箱を指差した。酔うぞ、お前。 さて、アーンヴァルか…… 確か高機動射撃タイプ、だったハズだ。初心者でも安定した勝率を狙えるとネットでの評判もなかなかだが、どうも俺の性には合わない。 「あすみん先生自重。そもそもアーンヴァルは格闘向きじゃないだろ?舞ともかぶるし、ややこしくなるって」 「むー、妹が欲しかったのに……」 「なんだ、そーゆー事か。ま、そうガッカリすんなって。後輩には違いないし、それなら妹みたいなもんだよ」 「んー、そっか。ならいいや!へへー、楽しみだなー♪」 頬をふくらませてすねていたかと思えば、もう屈託のない笑顔を見せている。幼さすら感じさせる彼女だが、俺も舞もそんなヒカリの笑顔が大好きだ。俺の神姫になる娘も、こんな笑顔を見せてくれるだろうか。 「あっ、ねぇこの子なんかどうかな?あんたにぴったりだと思うんだけど」 辺りを物色していた舞は一体の神姫を手に取ると、俺に差し出した。パッケージには獣の耳を模したヘッドギアと大きな手甲、そして焼ける様な橙色の瞳が印象的な少女が描かれている。 「犬型、ハウリン?」 「そ。いわゆる万能型なんだけどメインは近接格闘戦だし、防御力も高めだからあんたの要望にもぴったりでしょ?そーれーに……」 舞はぴっと指を立て俺に向き直ると、からかうように微笑みながら言葉を続けた。 「この子の性格。誰かさんみたいな、熱っ苦しい熱血感」 「誰が熱苦しいんだよ?失礼なヤツだな。でもまあ、たしかに悪くはないかもな」 僅かに胸が高鳴る。舞の手からハウリンの箱を受取ると、自然と俺も微笑んでいた。 「決まりだな。俺の相棒」 「なぁ、こーゆーパーツも買った方がいいのか?」 武装神姫、犬型ハウリンの会計を済ませた俺達は、別フロアのパーツ売り場に来ていた。 ここは剣やライフルなどの武器や、アーマー類他神姫用の服、装飾品などのパーツを扱っているフロアだ。基本セットにも武装は同梱されているのだが、戦略の幅を広める為にもこういった物が必要になってくるらしい。 「んー、まだいいんじゃない?実際に戦わせてみないといろいろわかんないでしょー?」 なるほど、もっともなご意見。確かに数さえ揃えればいいというワケでもないだろうしな。値段もバカにならないし、必要最小限に抑えたいトコロだ。 「ね、隼人。それよりちょっと上、覗いてみない?」 「上?」 なにやらそわそわした様子の舞からの提案。この神姫センターは七階建てで、一階から五階の各フロアが販売スペースになっている。そして、その上にあるのは―― 「うわぁー……」 俺は今日何度目かの驚嘆をあげた。 舞に連れられて見学に来たのは、武装神姫を所有する上では特に重要な場所。俺にとっては一番の目的であり、これから幾度となく訪れるであろう場所。 『神姫センターバトルスペース』 そこにいたのは思い思いにセッティングされた神姫と、そしてそのオーナー達。普段に比べれば空いているらしいのだが、それでもかなりの賑わいを見せている。 各対戦ポットには観戦用のモニターが設置され、中央の巨大なスクリーンにも今まさに行われている対戦の模様が映し出されていた。 「すげぇなぁ……」 「ふふん、びっくりしたー?大会の時とかはもっとすごいんだよー?」 後輩が出来て嬉しいのか、ただただ感心する俺に、ヒカリはなだらかな胸を張りながらあーでもない、こーでもないとの解説を始めた。曖昧でおおざっぱな説明なのでほとんど理解出来ないが、微笑ましいのでよし。 「へーぇ。ヒカリもここでがんばってるのか?」 「うん!あたし、すっごい強いんだから!隼人にも見せてあげるね!」 「そっか、よしよし。楽しみにしてるからな」 指先でぐりぐりと頭を撫でてやると、ヒカリはくすぐったそうに顔を綻ばせた。 「えへへー。ね、舞。せっかく来たんだからバトルしてこうよ!」 「今日はダーメ。武装持ってきてないもん。それだけじゃバトルは無理でしょー?」 すっかりご機嫌になったヒカリ。余程いいトコロを見せたいのか、戦いたくて仕方ないらしい。が、今日の彼女は飛行用のフライトユニットをしょっているだけ。神姫のパーツにはバトル以外、日常生活に使えるものも多く、ヒカリも普段はこれで飛び回っている。サイズの小さな神姫には人間の生活スペースでも広すぎる為、普段からこういったパーツを付けた神姫は多く見られる。 「えー、ヤだー!隼人にかっこいいとこ見せるのー!ねー、舞、武装取りに行こ!」 「ダメったらダメ。ヒカリー?今日はいい子にしてるって約束したでしょ?わがまま言わないの」 「でも……」 「今度また準備してから来ようぜ?そしたら俺も神姫連れて来れるし、ヒカリはその時カッコいいトコ見せてくれよ。今日はここの事を教えてくれればいいからさ」 俺も見かねて口を挟む。俺のせいで怒られたのでは可哀想だ。なんとか興味を他に移そうとするが、ヒカリはなかなか納得してくれなかった。 「むー……ヤだ!あたしは今がいいのー!」 「あっ、こら!」 ヒカリは舞の肩から飛び降りると、そのまま人混みの中へと飛んでいってしまった。 「ヒカリ!あぶないから……」 「きゃあっ!」 舞が言い終わるより先にヒカリが悲鳴をあげた。 「ってーな!なにすんだよ!」 続けて聞こえたのは男の怒声。どうやら急に飛び出した為に、誰かにぶつかったらしい。舞と一緒に慌てて声が聞こえた方に駆け付ける。人とぶつかっただけだとしても、僅か15センチ程しかない神姫にすれば破損の原因には充分すぎる。 「ご、ごめんなさい……」 「すみません!大丈夫でしたか?」 ヒカリは……うん、無事みたいだ。心配したような事故には到らなかったようで、怯えながらもぶつかった相手に頭を下げていた。 「なんだよ、お前の神姫か?どうしてくれんだよ、これ!」 ぶつかった時にぶちまけたのか、男は染みのついた上着と潰れた紙コップをいかにも不機嫌そうに舞に突きだした。 「あの、えっと、あたし……」 「ほら、ヒカリもちゃんと謝って」 涙目でうろたえるヒカリをなだめながら、舞が深々と頭をさげる。 「本当にすみませんでした。あの、クリーニング代はお出ししますので」 「ご、ごめんなさい!」 「謝って済んだら警察はいらねぇよ!それより……」 男はそこで言葉を切ると、舞をじろじろと舐めるように見始めた。とても人格的に優れた人物には見えないが、まだ言い掛かりをつけるつもりだろうか。 「そうだな。ちょっとオレに付き合うなら許してやってもいいぜ」 あまりにもセオリー通りの絡み方。オヤクソク、というヤツだろうか。今時こんなヤツがいるとは思いもしなかった。国に天然記念物として保護してもらえよお前。 「え?そ、そんなこと言われても……」 舞もヒカリも、ちゃんと頭を下げて謝っている。既に出来うる限りの礼を尽しているのだから、今更そんな筋合いは無い。 「お前、いつの時代のチンピラだよ?」 異性に対しては人見知りの激しい舞。そんな舞を、これ以上黙って見ている事は出来なかった。こういうタチの悪そうなのは早めにお帰り願うのが一番だろう。 「なんだ、お前?」 「その娘らのツレだよ。お前こそなんだ?こっちは充分謝ってんだろ?」 俺はとにかく威圧的に言葉を放つ。このテのヤツは強気に出られるのには弱いハズだ。 「ぶ、ぶつかって来たのはそっちだろ!?」 やっぱりオヤクソクだ。もうどもりだした。こうなったらもう一押し。この調子で続けてやれば適当な捨てセリフでもはいて退散するハズ。 「だからさっきから謝ってんだろ?しつこいんだよ、大の男が」 「だ、だったら……だったら神姫バトルでケリつけようぜ!」 そう、セオリー通りにこれで退散……しないのか。いや、そんな事より。 「ち、ちょっと待て!なんでそうなるんだよ!?」 「お前らだって神姫オーナーだろ?だったら決着はバトルでつける!公平な条件だ!」 どんな理屈だ。この野郎、開き直ったな。 「おれが負けたら全部チャラにしてやるよ!ただし、そっちが負けたらおれの言う通りにしてもらうからな!」 言いながら舞を見るといやらしい笑いを浮かべる。ちくしょう、時代劇の悪代官みたいなヤツだ。 「舞、隼人。ごめんなさい、あたしがわがまま言ったから……」 「いいんだよ。ヒカリはちゃんと謝ったんだから」 「隼人、でもどうしよう……」 舞はもう泣きだしそうな顔だった。こんな顔を見るのはいつ以来だろうか。子供の頃から泣き虫で、しょっちゅう慰めてやったっけ。そしてその頃の気持ちは、まだ俺の中に残っているらしい。 「大丈夫。心配すんな」 俺は出来るだけやさしく微笑んで、そっと舞の頭をなでてやる。舞の泣き顔も、ヒカリの泣き顔も見たくない。沸き上がる感情はもう抑えられなかった。 「こいつを泣かせたヤツは、昔から俺か姉ちゃんに凹まされる決まりになってるんだ。俺が相手してやるよ。文句はないだろ?」 「別にどっちでもいいぜ。なんなら二人まとめてかかってくるか?」 かなりの自信があるようで、男はニヤけ顔で余裕を見せている。今のうちに笑っておけばいい。すぐに笑えなくしてやる。 「隼人!?相手してやるって言ったって……」 「ああ、俺と……コイツでな」 目を白黒させる舞に、俺は持っていた荷物を軽く掲げる。余程驚いたのか、その表情のまま一瞬凍りついてしまった。女の子がそんなおもしろい顔するもんじゃないぞ。 「コ、コイツってさっき買ったハウリン?無理だよ!まだセットアップもしてないでしょ!?」 「今からやる」 「でも!」 「大丈夫だって、いい子で待ってろ。さて、それじゃセットアップしないとな。手伝ってくれ」 「……いつもそうだよね、隼人は。ごめんね、頼ってばっかりで」 未だに納得いかないようだったが、説得は無理だと悟ったらしく、舞は少し困り顔で微笑んだ。 「いいからまかせとけって。ほら、それよりセットアップ教えてくれよ」 「うん。セットアップって言っても、必要なのはCSC(Coar Setup Chip)のセットとオーナーの認証の二つだけなの。コアユニットの胸を開いてみて」 パッケージを開くと、文字通り『小さな』女の子が眠るように横たわっていた。その寝顔はまるで本物の少女のようだったが、肩や膝等、間接の可動部分が彼女がロボットだという事を思い出させる。 舞の指示に従い、小さな少女の胸部をそっと取り外す。するとちょうど心臓にあたるその部分に、三つの穴の空いた円環状の回路が走っていた。 「そこにCSCを三つセットするの。その組み合わせで神姫の特性が決まるものだから、慎重にね」 「このちっちゃい宝石みたいのがCSCだよな?」 BB弾より更に小さな色とりどりの球体。これが神姫に『命』と『心』を宿らせる為の物らしい。 「そう。赤いルビーが攻撃特性、黄色のトパーズが命中特性で……」 「全部赤」 「ちょっ、慎重にって言ったでしょ!?ちゃんと考えなさいよ!」 「おばあちゃんが言っていた。やられる前に殺ればいい!それにほら、主人公的にも色はやっぱ赤だろ?」 あくまで舞の意見は参考にして、赤く透き通った珠を神姫の胸に填めこんだ。三つ全て取りつけると仄かな光が回路を走り、CSCがうっすらと点滅し始めた。 「もう、おばあちゃんそんな人じゃないでしょー?知らないからね?……じゃあ胸の回路を閉じて……そう。さ、起動するよ」 「え、もう?」 キューンという小さな電子音をあげると彼女は静かに眼を開き、深い眠りから目覚めようとしていた。少し間をおいてゆっくりと起き上がると、正面にいた俺を見上げ、始めての言葉を発した。俺の神姫が、起動した瞬間だった。 「あなたが、私のオーナーですか?」 「ほら隼人。オーナー認証して」 「え?あ、ああ。そう、俺がオーナーだよ」 「……認証しました。これからよろしくお願いします、マスター」 そう言うと彼女は深々と頭を下げた。礼儀正しい性格のようだ。うん、こういうことは最初が肝心だ。 「こちらこそ、よろしく」 俺は掌ほどしかない小さな彼女に手をさしだす。一瞬戸惑いを浮かべた彼女だったが、すぐに指先を両手で握り返し、嬉しそうな笑顔を見せてくれた。 「はいっ!」 「オイ、いつまで待たせるんだ?それとも逃げ出すための相談でもしてるのか?」 「誰が逃げるか。すぐ相手してやるから待ってろ」 「こっちはいつでもいけるぜ。なあ、アル?」 男が腰のポーチに声をかけると、そこから小さな影が飛び出してきた。赤を基調とした体のペイントに、緑色の髪を頭の両側で結い上げた神姫。なんだかリンゴっぽい。 「もちろん!実力の差を思い知らせてやるんだから!」 「サンタ型ツガル……高機動狙撃型よ」 舞が小さな声でつぶやいた。先程の説明を聞いた限りでは、とても相性がいいとは言えない。どうやら楽に戦える相手じゃあないようだ。それにしても、サンタ型ってなんだろう。色? 「あの……マスター?」 考え込んでいると、ハウリンが不安そうに声をかけてきた。今の状況が把握しきれていない様子だ。 「ああ、そっか。実はいきなりで悪いんだけど、お前に戦ってもらいたいんだ。起動したばっかりだから無茶だとは思うけど……大丈夫か?」 「確かに、通常ですと起動直後の各モーメント制御、及び演算機能の最適化などは日常生活のような負荷の少ない状態で行っていくのが最善です。起動直後の、しかもバトル中に行うというのは少なからずリスクも伴います。ですが――」 彼女はあくまで簡潔に、そして淡々と俺の問いに答える。それはそうだ。どんなに精巧に出来ていても彼女は人工物、『ロボット』なんだ。でも彼女は―― 「私は『武装神姫』です。いつ、いかなる時であっても、マスターの為に戦ってみせますよ」 彼女の眼は、その燈色の瞳は、たしかに力強い光を放っていた。凛とした闘志をみなぎらせて。 「よし、凛だ」 「え?」 きょとんとした顔の彼女を掌に乗せ、もう一度呼び掛ける。名前、俺の武装神姫の、その名前。凛々しく、力強くあって欲しいと願いを込めて。 「お前の名前。『凛』。お前は今から凛だ」 「『凛』……」 「さあ、そんじゃあ頼むぞ凛!」 「はいっ!任せてください!」 俺と凛。俺達二人の物語が、今始まろうとしていた。
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/542.html
戦うことを忘れた武装神姫 その18 ・・・その17の続き・・・ 「ぬっふっふ・・・」 装着した機械のスイッチを入れるリゼ。 キュイイィィィ・・・ サイズに似合わない、妙に迫力のある動作音がフィールドに響いた。 「あーっ! リゼ、いつの間にぃ?!」 謎の機械を搭載したリゼの姿に、エルガが声をあげた。 「なんだ、あれは。」 「あれー? にゃーさん知らないの? リゼとにゃーで作った、サブパワーユニットにゃの。 CTaねーさまに持って行かれちゃったと思っていたんだけど、予備も作ってたみたいにゃのだ。」 「あぁ、この前発売延期になった、アレの原型かぁ。」 CTaに振る久遠。 「そうそう。ま、形かえて出すつもりだけどね。 さーて、リミッター無しのプロトタイプ、どれだけの能力があるか、見せてもらおうかねぇ。」 腕組みをしながら、いつの間にかモニター席に座っているCTa。 押しのけられた久遠は、頭だけを何とかモニター席に突っ込んで観戦。。。 「ぬふふふふ・・・きてる、来てるぞ・・・! システムオールグリーン、同期完了・・・ 冷却システム作動!」 ブヒョオォォォォ・・・・ン・・・ 背中の機械が、より一層大きな作動音に変わる。向こうのモニター席に座るサイトウにさえ聞こえるほどの響き。 『・・・来るぞ。 やつはほとんどの武装を捨てたようだ。 一撃離脱型の戦闘方法になるだろう。 ポイントT2へ移動、誘い込め!』 サイトウが命じると、ストラーフは縦長の建物が両サイドに並ぶ、いかにもな地点へ移動。 「リゼ、いっきまーす!!」 相手が移動を終えると同時に、リゼも動いた。 装置を背負ったことによる重量増を微塵も感じさせない実に軽やかな足取りで駆け回り、すぐさま相手の「名無し」ストラーフを発見。 「リーダー、みーつけたっ!」 その瞬間。 『今だ! ファイア!!』 サイトウの声に反応し、名無しのストラーフはぐっと拳を握る。リゼの左右の建物が、大音響と共に崩壊。 このフィールドに仕掛けられたトラップ中、最大のもののひとつ・・・。 「う、うわあぁあぁぁぁっっ!!!」 再び埋まるリゼ・・・ ではなかった。 「・・・と埋まるとでも思ったか?」 サイトウも、そして久遠も、CTaまでもが見えないほどの速さだった。リゼは名無しのストラーフの背後に廻り、腰(正確には背中の装備一式)をがっちりと掴んでいた。そして相当の重量があろうかと思われる相手をひょいと持ち上げ、 「そぉ・・・れっ!!!」 何とそのまま、ジャーマンスープレックスを仕掛けた。 突然のことに相手は一瞬反応が遅れるも、リアアームにて何とか回避、リゼを突き放す。 ずざざざざざー!! 飛ばされたリゼは、瓦礫の上を滑走する。しかし、無傷。 「いってぇなぁ・・・ しかしその反応速度、さすがは元リーダー! って、え、えええぇぇっ?!」 起きあがろうとする前に、相手からのまるでアラレのようなグレネード弾が撃ち込まれる・・・ 『いけ! 撃ち尽くすまで打ち込め! 跡形もなく消し去るんだ!』 サイトウが狂喜のごとく叫ぶ。煙るフィールド。壮絶な光景に、ブーイングがわき上がる。 しかし、サイトウは攻撃を止めさせない。 やがて、弾が尽きたのだろうか、攻撃が一旦やんだ。 すると・・・ 「けほっ・・・ ああっ?! せっかくヌシさんに新調してもらったツインテールが、片方どっかいっちまったじゃないかっ!! こ・の・や・ろ〜!」 ユニットから相変わらずの騒音をまき散らしながら、のっそりとリゼが立ち上がり・・・撃ち込まれたミサイルのうち何発かを抱えている。 『な・・・にぃぃぃぃっ!!』 絶句するサイトウ。これほどまでのアタックを喰らっても、ほぼ全くの無傷で、しかも余裕あふれる顔付きで弾を抱えている神姫・・・ 「名無し」も、この状況をどう判断すべきか、動きが止まっていた。 「投げられたものを投げ返すのは、ウチでは慣れっこなんだよ!」 叫ぶや否や、装置で打ち出すよりも正確に、敵の「名無し」めがけてそれらを投げつける。なにも指示が出せないサイトウ、逃げまどう「名無し」・・・先までのブーイングが、今度はリゼを応援する声援へと変わっていた。 「エルガとのじゃれあいで身につけたプロレス技、シンメイとのデザートの取り合い合戦で投げつけあうフォークとサジ・・・素晴らしい切れ味だね。」 久遠がぼそり呟く。 エルガは画面を叩いて応援し、シンメイとイオは、技についてあれやこれやと討論中。。。 こりゃぁ次のリンゴ取り合い合戦は 一段と壮絶になるだろうなぁ・・・と考える久遠に、CTaが言った。 「な、言ったとおりだろ? いつも通り、それが一番強いんだって。そうだリゼ、この前話したあれ、やってみろよ。 カッコイイぞ〜。」 久遠のマイクを再び横取りし、CTaはリゼに言った。 「あー・・・、やってみるか。」 火薬類が残り少なくなり、どうするか考えていたリゼは、CTaの呼びかけに再び浮かべる悪魔の笑み。 反撃が一息ついたため油断したのだろうか、名無しのストラーフは弾切れで不要となった装備を捨てるため、一時動きを止めようとした。 そのスキを リゼは見逃さなかった。 「せぇの・・・ とりゃぁああぁぁぁっ!!」 高らかに放りあげたグレネード弾を、パワーユニットを直結し出力増強状態の右足で次々に蹴り出す。 弾は恐ろしい程正確に、名無しの背後の建物に 命中。 崩れ落ちる壁を避けようと、思わず飛び上がる名無し。 今だっ!! リゼは相手が飛び上がる瞬間 -すなわち、最も無防備な瞬間- を探っていた。 パワーユニットをフル作動させ再び猛烈な速さで名無しのストラーフに接近、 「な、何を・・・?!」 相手が考える間を与えず、装備が中途半端に外された状態で機動性が落ちている相手の両の足首をがっちりと掴んだ。 そして・・・ 「うおりゃああぁっ!」 「うっわーーー!」 名無しに、そのままジャイアントスイング。 パワーユニットをフルパワーモードにしていることもあり、半端に残っている名無しの武装はほとんどが 遠心力で飛ばされた。 リゼは数回廻したところで名無しを放り投げ、久遠特製のステアーもどき銃を取り出し狙いを定め、引き金を引いた。 パッ、パパパッ! パスパスパスッ!! 必要最小限の射撃で、残る武装のみを破壊。 名無しの本体に、一切の怪我は無し。 恐ろしいほどの精密射撃。。。 体勢を立て直し、なんとか着地した名無は背中に着けた武装を探る。しかし機能するものは- 、ひとつとして無かった。 にらみ合うリゼと名無し。 『まだだ・・・T6へ移動だ! そこで仕掛けられる!』 明らかに焦りの色が見えるサイトウが声をかけた。 名無しは一瞬、移動をする素振りを見せた・・・が。 『おい、なぜ移動しない!』 「Mr.サイトウ、それは無駄なことです。 今までの相手側の動きを見て、まだ気づかないのですか?」 その声に・・・、リゼも驚きの表情になった。 「もしあなたが、本当に神姫の戦いというものを理解しているのであれば、明らかにあちらが優位であることが解るはずです。」 そう言う名無しの足は、わずかに震えている。自らの意志で、プロテクトが一部解除されたのだろうか。 『だから何だというのだ? ならば、武装で補え。罠で差を埋めろ!』 「そうですか。でしたら、あなたの言うことが本当に正しいのか、今ここで確認してはいかがですか? リゼ・・・さん、いきますよっ!」 言うが否や、名無しは再び建物の密集した地点へ移動、壁に埋め込むように隠していたランチャーを2基取り出し、さらにリゼを挑発する。 『なぁ、ヌシさん。 ちょっとだけ昔を思い出してもいいか?』 ぼそりと呟くようなリゼの通信が入った。 久遠が覗き込んだモニターの中のリゼは、今までにないほどに穏やかな、かつ自身に満ちた顔だった。リゼ の言葉の意味するところを酌み取った久遠は、 「あぁ、いいぞ。 但し、無理は禁物ね。」 と答えた。 と、さらに小声で久遠にだけ聞こえるレベルで訊いてきた。 『 -昔のあたしを見ても、嫌いにならないか?』 「昔も今も、リゼはリゼ。 大好きだよ。」 即答する久遠。 『・・・ありがとう。 やっぱヌシさんは最高の神姫使いだよ。』 リゼは再びパワーユニットを全開にすると、名無しが待つポイントへ駆けていった。 -カッコイイ神姫になるために。 ・・・>続くっ!!>・・・ <その17 へ戻る< >その19 へ進む> <<トップ へ戻る<<
https://w.atwiki.jp/magamorg/pages/8805.html
武装神姫アーク 火 R (4) 3000+ ヒューマノイド(フレイムランス) ■スピードアタッカー ■パワーアタッカー+4000 ■相手ターン中、このクリーチャーのパワーは+3000される ■このクリーチャーが攻撃する時、相手のブロッカーを持つクリーチャー1体を破壊する (F)もう終わりぃ? 作者:マイルス 代理作成:紅鬼 評価 武装神姫アーンヴァルと戦って神姫バト(黙 えと、効果の方は小さくなった源氏といった感じですね。Wブレイカー持ちじゃないので、使用感覚はロウバンレイに近いかも -- 紅鬼 (2011-01-03 01 53 40) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1487.html
戦うことを忘れた武装神姫 - type_S -07 楽屋 リゼ「どーもー。主演のリゼだよーん。」 イオ「監督のイオです。」 リゼ「この話、細かい設定一切なしなのねん。 皆様で、どういう場面かをどうぞ考えてくださいって方向で。」 イオ「それから・・・マスターが勢いで作ったということなので、お見苦しいこと、どうかご容赦を。」 リゼ「そろそろ本編も進めてもらわないとね。ねぇ、ヌシさ・・・あれ?」 イオ「ふとんの中はマオチャオのぬくもりとか言いながら寝てしまいましたよ・・・」 リゼ「まぁ、いっか。 あたしもヌシさんと寝るー!」 イオ「あ、こら! 監督の私をさしおいて・・・」 かくして、夜は更けてゆく。 <<トップ へ戻る<<
https://w.atwiki.jp/rakuenwo/pages/112.html
武装神姫 公式サイト http //www.shinki-net.konami.jp/ wiki http //www33.atwiki.jp/2chbattlerondo/ 自分の神姫とイチャイチャしながら頑張るげーむ 要求スペックが無駄に高いのは許してね! 楽園のプレイヤー(五十音順) FFP名 オーナー名 好きな神姫 一言 少佐 ねこきのこ パチュリー 竜瑠 ヴァローナ ライトアーマー追加はまだかい? まおちゃお 久寺筑紫 はうりん すたれてるなーなのだ・・・ ばいーん ばいーん 飛鳥 くそっ!手持ち二体ともEXになっちまった! おいしい牛乳 おいしい牛乳 フブキ ぱっつんかわいい よくあることとか 無課金でも大丈夫? はっきり言って、辛いですが、不可能ではありません。 課金神姫・課金装備で選択の幅は広がります、が 基礎的な物は無課金でも大分揃います。 それを活かしましょう。あとはマッチ運に期待しましょう。 なにこれホントに勝てるの? はっきり言って、序盤は負けゲーと思ってください いきなりポンポンと勝てるゲームではありません。耐えましょう。 勝てる気配がしないよー 負けたときの、相手の神姫のステータスや武装を参考にしてみましょう。 どんな装備だと勝ちやすくて、どんなステータスが強いのか 観察してみましょう。良いと思ったら取り入れてみるのも大事。 いいところまで行くようにはなったんだけど・・・ バトル開始の前に、相手の装備や戦闘履歴などを見てみましょう。 その人が今までにどの武装を選んで戦ったのか、勝ち負け、そして1~4番の装備等、情報が沢山あります。 装備1ばかり選んでいる人なども良く見かけます。装備1が、もし接近武器だけだったら? 遠距離武器で美味しく食べてあげる事が出来ます。もぐもぐ。 トレーニングしたのに勝てないよー? トレーニング後の神姫は実戦感覚を失い、実力は発揮できません。 主に防御・命中・回避に影響が出ます。 実戦感覚は、トレーニング時のバッテリー消費量と同じ数値で減ります。 基本値を0として、最大-16まで低下します。 (例:中級訓練→消費量1=一回につき1低下) なので、トレーニングというものはすればするだけ、パラメーターは好きな物を選んで上昇させることが出来ますが 直後の戦闘では、「まず敗北してしまう」というデメリットがある物だと思ってください。 実戦感覚って回復できないのー? 勿論出来ます。 オフィシャルバトルを一回行うごとに、4回復します。 最大低下量は16なので、どんな状態でも4回オフィシャルバトルを消化すれば 間違いなく元に戻ります。 買うならどの神姫がいい? ゲームとしてなら 天使型あーんばる!あーんばるを買えばいいと思うの! 使い勝手が良い武装が揃い、また素体も扱いやすいです。 フブキの武装と合わせられる紅緒もオススメできます。 マオチャオも分かりやすいのとプチマスィーンズが割と便利なので良いかも? しかし、愛情さえあれば・・・なんとでもなる物ですよ。 なんとなく落ち着きません! もし手元に神姫がいるなら足をひらいたりとじたりしましょう。 体育すわりをさせてもいいかもしれません。
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/966.html
武装神姫のリン 鳳凰杯篇 その2 歓声が支配する会場に司会の声が響く。 "ついに決勝リーグ1回戦、第3試合の選手入場です!! 虎門から入場するのは鶴畑家の次男にして若年ながら立派なファーストランカー。 Eブロック覇者の鶴畑大紀選手とその神姫ミカエルの登場だ~" 司会が熱のこもった文句で鶴畑大紀の入場を告げる。 俺とリンは龍門よりの入場でまだ門の前で待機だ。 歓声はここからでも十分に聞こえているが、門を開ければ大音量で聞こえてくることだろう。 さすがにこんな大舞台は初めてだ。 冷静にしようと思っていてもどうしても心臓の鼓動が早くなる。 「緊張しますか?マスター?」 俺の様子に気が付いたリンが尋ねてくるが大丈夫だ、と視線で返した。 「はい、マスターがしっかりしないとこのバトル。勝てないですよ?」 「ああ。 やるぞ、リン!」 「はい!」 "それでは続きまして龍門より、Fブロック突破の藤堂亮輔選手とそのパートナー、『黒衣の戦乙女』リンの登場です! お~っとここで歓声が今以上に大きくなった~" 歓声は気持ち、俺とリンが登場したときのほうが大きいようだ、司会がそう告げる。 「いつも応援してます!!」 「鶴畑の坊やなんぞ蹴散らしちゃえ~」 「前もファーストランカー倒したんだろ!? やっちまえ!!」 なぜかこんな声援も聞こえる。 ここまで大きな大会で声援をもらえるとは思っていなかったので嫌が応にも気合が入る。 それはリンも同じのようだ。 そうしてゆっくりと門からステージまでたどり着く。 ステージの反対側にいる鶴畑大紀はなんとなくいつもよりさらに目つきが悪い。 と言うよりはいつものような「ふん、どんな神姫だろうとミカエルでぼろぼろにしてやるさ」と言うような自信の塊のような、相手を軽く見ているような表情ではなく、切羽詰ったかのような表情で非常に悪役面だ。 だから正々堂々戦うリンは正義の味方ってか? まあそういう要素も必要なのかもしれないけど、関係ない。 リンの力を信じ、俺はそのサポートをする。 "それでは両者、V.B.B.S.筺体でセッティングを行ってください。" 筺体にリンが接続するのを確認しスロットにフラッシュメモリーを差し込む。 通常はセンターの専用の機械でIDカードにデータを写すのだがそうしている暇が無かったのでどうしようもない、データのスペックについての確認(たとえば反則レベルが武装やらのチェックが入る。コンピューターによる自動判別で許可が下りないと使用できないのだが、今回のデータは会社で行ったほぼ同じ基準のチェックを通過したものなので問題ないはずだ。) が行われる、問題なく基準をクリア。これでこの戦いから使えるようになった。 その"突撃武装"をサイドボードにセットして、リンの初期武装はあくまで今までと同じ基本形。 これは初心を忘れないと言うのと、万が一陸戦装備で出てこられた場合に対応しにくいからだ。 そうしてリン…燐のセットが完了する。 『黒衣の戦乙女』燐がバトルフィールドに姿を現す。 それと同時にミカエルも姿を現した様子だ、距離は最大。しかしステージが幸いにもまっさらな平地ではなく多少ながら障害物の存在する荒野で助かった。仮に"突撃装備"を駆使したところで接近を許す相手ではない、しかも今回はあちらさんも気が立ってるみたいでいつも以上に油断は無いのではないか?という気さえする。 天使型の特徴である索敵能力で発見されれば平地での勝負は圧倒的にこちらが不利なのだ。 だからジャマー代わりに砂埃を巻き上げたり、障害物があるだけ相手のアドバンテージが減る。 ゆえに荒野と言うステージは最悪の状況を回避できると言うだけでも十分すぎるステージだ。 「荒野か…十分にマシだな。行くぞ!燐。」 「はい、マスター!!」 燐は荒野を駆ける。 砂埃を巻き上げつつも疾風のように進む姿はなんとなく某Z○IDSのエンディングを感じさせるがこの時代に分かる人間はどれくらいだろう? とかなりの距離を走ってきたがいっこうにミカエルを目視することができない、しかもあっちの砲撃能力は絶大で精密射撃も難なくこなせるはず、だからそろそろ第1撃が届いてもおかしくないのだが… 「おかしいな…」 「ですね。てっきりそろそろ砲撃の1つぐらい飛んできてもいいはずですが…」 と言っていたらやっと前方より轟音を上げてレーザーが…サイズがおかしい!!? 「燐、よけろ!!!」 「っつ!!!」 燐は体操の競技のようなステップやバク宙といった技の組み合わせで先ほどの地点から離れる、数秒後にそこを通り過ぎた"砲撃"は地面を半円に削っている。どうしたらこんな威力がでるっていうんだ? "ここでミカエル選手が攻撃です!! 燐選手はなんとか避けましたがこの威力は常識外だ~~当たれば1発でOK確実です!!" とにかく、やっぱりあっちにはこちらの位置が割れてるので早めに装備を換装するべきかもしれない。 そう思ったがまだ燐が相手の姿を認識していない状態ではどうにもならない、とりあえずセンサーの感度を最大限にして砲撃をできるだけ早く察知、回避して進むしかなさそうだった。 幸いにも地面はしっかりしており武装脚部への負担も少ない。データ戦の最大の利点はメンテナンスいらずで最高の状態の武装を利用できる点だ。 もちろんバトルでかかる負荷はしっかりと計算されるがイレギュラーが起こることは無い。 だからこそ力加減を見極めれば負担を最小限に抑えつつも燐は最高速度を出すことが可能なのだ。 そうして何度かの砲撃を回避しつつ進むこと3分。やっとのことで燐のセンサーがミカエルを捕らえた…がその映像を見て俺は口をぎりりと噛むしかなかった。 ミカエルの装備は、天使型のレーザーライフルを5つも束ねたサイズの荷電粒子砲に4門のレールガン。いつものビット兵器がぞろぞろとシールドを張っている。 どう考えてもあのサイズの粒子砲なんて持って動けるものじゃないだろうに…勝負を捨てたか? と思えば、荷電粒子砲を振り回して撃ってくる!!? 「消し飛べ…」 1発のチャージにどれだけかかるのか分からないが、やっぱり連射は効かないらしい。 その分はきっちりとレールガンで埋めてくるが、避けられないわけじゃなかった。 燐はステップやバックステップを駆使して飛び跳ねるようにして砲撃をいなす。 それでも超高速のレールガンだ、装甲に数発は掠っている。 「直撃しなければ…!!?」 燐は一瞬己の目を疑った。 粒子砲の先端から、極太のビーム刃が飛び出してそれが振り下ろされてくるのだ。 それでも砲身の重さからか思うような速度で振り切れていないようで、そのタイミングからでも薄皮一枚で回避することが出来た。 ここまで大味な戦い方…ありえない。 "ミカエル選手、いつもと様子が違い格闘戦を仕掛けています。これも燐選手には予想外か!!" 司会もさすがに驚いた様子で実況を続ける。 「どうしたんですか? こんな戦い方、貴女はしなかったはずです!!」 思わず燐は叫ぶ、表情を隠してて大きな光の剣を振るうミカエルに向けて。 それでも返答は無い。 ただただ、弾丸と剣の切っ先だけが返ってくる。 「ならば私から近づくほか無いみたいですね…マスター!!」 「どうするんだ?」 「とりあえず近づかなければ戦うににしてもどうにもなりません、使います!!」 「分かった。サイドボード展開。」 「現状装備の部分的ロックオフ。ハードポイント開放を確認。転送可能です。」 「させない…」 ミカエルが砲撃を加えようとするがそこにSRGRが飛び込んできて爆発。 すでに燐の十八番とも言える「SRGRの投擲から射撃による遠隔爆破」でダメージこそ与えられないものの、膨大に撒き散らされる熱量でセンサーは燐を捕らえられない。 「マスター!!」 「燐、受け取れ!!」 その瞬間、燐は光に包まれる。 それは一瞬であり、ステージにある巨大スクリーンにも燐の体が輝いたようにしか写っていないが、確かに燐の姿は変わっている。 悪魔型ストラーフの基本武装はそのままに、背部ユニットから大きな2対に翼が生え、その基部には大口径のブースター。 武装脚部のすねあたりには装甲が追加され、左武装腕部にはあの市販パーツ「EXシリーズ」のものよりさらに刃の大きい鎌が握られ、右腕部のマニピュレーターは巨大になり爪も鋭く変化していた。 さすがに悪魔らしくし過ぎたかとも思ったが追加パーツは基本的に同じ濃紺かシルバーなので見た目はそれほど悪役ではない。もっとも悪魔型にするなら最初からは翼は赤にしてたし。 「黒の戦装束」 その名のとおり、燐専用の武装ユニット。 基本はあのEXシリーズの悪魔型用のユニットだが内部構造や各アクチュエーター等の出力、感度、レスポンスすべてが燐の今までのバトルのデータを元にチューニングされ、デザインもカラーも変わっている。 とはいえ根本のデザインは機能美の観点からしてもこれが一番だと思われるものなので似通っているところがあるのはあたりまえだ。 あと違うとすれば本体のアーマーが通常より強化されている、特に胸部アーマーは防御力に定評のある第3弾のアーマー並みの強度を出している。もちろんその分だけ重くなっているが武装脚部があればその変化は微塵にも感じないレベルだ。 また翼の色が銀色に変わるだけで印象がかなり違うらしく、観客は口々に意見を出し合っている。 「カッコよすぎるぜ!!!」 「あ~あ陸戦特化だから黒子は美しいというのに…」 「でもしょうがないでしょう? 相手はずっと空飛んでるんだから自分も飛ばないと攻撃できないじゃん?」 「俺の黒子も改造で銀の翼にしようかな…」 「文字通り銀の翼に望みを乗せて…ってかw」 …最後のは言った人の年代がわかってしまうな…俺の親父と同年代かよw "燐選手、サイドボードの武装を展開! しかもこれは私も初めて見る武装です。これが燐選手の切り札なのか!!?" 実況も驚いてるな…デザインに1週間掛けた甲斐があった。 「これで貴女と同じ空に行けます」 「来れるものなら…」 その後は言わずに無言でレールガンを撃って来るミカエル。 「当たるわけには!」 鈍角の軌道を描きながら燐は飛翔し、レールガンを回避しつつも全速力でミカエルに向かっていく。 「来る来るな来るな!!」 もう照準も付けずに発砲している、これでは回避行動もほとんど要らなかった。 "ものすごい機動力で空を飛び、燐選手はミカエル選手に一直線だ!!! これで勝負は決まるのか!!!?" 「貴女は何がしたいのですか?」 ついに粒子砲に手を掛け、ゆっくりとそれを払いつつ燐はミカエルに顔を近づけ、ついに彼女の表情を見た。 「…………」 「なぜ、泣いているのですか?」 「…うるさい、関係ない」 「でも、気になります。」 観念したのか、ぽつりとミカエルはつぶやいた。 「勝敗に関係なく、今日で私は壊されるから」 燐は驚いたらしいが、それでも優しい表情を変えずに 「……なぜですか?」 「この前に犬型とかに負けたから」 「どこのですか?」 「知らない、でもひどい負け方をした。頭から真っ二つにされた。その後もまた他のにやられた。」 「怖かったんですね…」 「で、負けたから私は今日で終わりだって、マスターが」 「そうですか…」 「ええい!! いったい何をやってるんだミカエル。今なら背中ががら空きだぞ!!ビットで撃て!!!!」 鶴畑大紀も見ていてうっとおしくなったらしく、ミカエルに指示を出す。 「でも、貴女は同じような恐怖を他の神姫に与えたことが何度かあったはずです。」 「…うん、あの時の恐怖は忘れられない…怖い。そんな勝ち方を私は何度も相手に与えてた…」 「もう、しませんか?」 「しない。だって怖いもの……でも私は今日で"死んじゃう"」 「させません、私と、私のマスターが」 「そんなの無理だよ。」 「信じてください。」 「…」 「ね?」 「………本当?」 燐はいつも俺たちに向けるあの柔和な笑顔を浮かべて 「はい。」 そう言い切った。 「分かった。信じる。」 そうしてミカエルは自らサレンダー信号を送る手続きに入った。 "お~っとミカエル選手が武器を下ろした!! 何が起きたのでしょうか!?" 実況はもう混乱している。 無理もないと思うけど…とりあえず無傷の勝利を得た燐にねぎらいの言葉でも掛けてやろうと思った。 「燐、よくやったな」 「いえ、マスターの装備のおかげですよ」 「…ありがとう、燐」 ミカエルが右手を差し出してくる。 「いえ。」 そうして燐が手を差し出そうとした瞬間…… ビットが突然燐に砲撃を加えた。 「きゃぁあああああ」 ビットの砲撃は威力こそ低めなものの、無防備な燐を撃ち落とすには十分な威力を持っていた。 「サレンダー信号を出そうとしてたのに…なんで!?」 ミカエル自信にもなにがなんだか分かっていない様子だ。その表情も次第に変わっていく。 「何?コレ…私の体が…思うように動いてくれない!! 嫌、いやぁ!!!」 そう言いつつもミカエルの右手の粒子砲は燐の墜落地点を捉えている。 「燐を撃つなんて…いやだぁああああああ!!」 なんとかミカエルの意思が一瞬通ったのか、発射と同時に右手はそっぽを向き、墜落地点からはずれた。 「なに、貴女誰?? 私? そんな…だめ、だめぇ」 「燐、大丈夫か?? 燐!!」 「……はい。ダメージも問題ありません。でも背部のラックがつぶれました。装備をマウントできないので左手がフリーになりません…」 「しかたない、鎌は一度戻すか?」 「それでは間に合いません。このままで行きます」 「ああ、とにかくミカエル自身にもどうなってるか分からないから気をつk……」 レールガンとビットの砲撃の嵐が燐を襲った。 "まさか、まさかまさか!!! 今までのミカエル選手の行動は高度な頭脳戦だったのか?? 先ほどとうって変わって全力の砲撃だ~~^" 「貴女、先ほどまでのミカエルじゃないですよね?」 ふとミカエルが声の方向に目を向ければ…強烈な衝撃が加わりミカエルは大きく後退する。 現在。さっきまでミカエルが佇んでいた座標には燐がいる。 それもさっきの砲撃の雨を抜け、最高速度で飛翔したまま体をひねって回し蹴りを叩き込んだのだ。 首をぽきぽきと鳴らして体制を整えたミカエルが先ほどの燐の問いに返答してくる。 「私はミカエル。それ以上でも以下でもない。私が下された命令はお前を壊す。ただそれだけだ。」 「…"ミカエル"を返してもらいます。絶対に。」 そうして第Ⅱラウンド、正真正銘の試合が始まった。 ~鳳凰杯篇その3?~